departure
ついこの間まで、マフラーをぐるぐる巻いて、背中を丸めて歩いてたのに。
薄手のカットソーで、大学までの道をのんびり歩く。
今日の講義が休講になったおかげで、時間はたっぷりある。
新入生だろうか。真新しい学生服を纏った中学生を見て、ふと、母校に寄ってみようかと思った。
青春学園。
あたしの母校。
学校のそばまで来ると、重たそうに枝をもたげた桜並木に昔を思い出す。
あの時、あたしに勇気があれば、あたしの時間は今もまだ、動いていただろう。
「こんなとこでなにしてんの」
毎日夢にまで見るその声に振り向けば、あたしの青春がそこにいた。
「リョーマ!?え?なんでここにいるの?」
「無性に会いたくなってさ。一時帰国してきた」
あたしの後悔はあの日あなたに付いて行くと言えなかった事。
「言ってくれれば空港まで迎えに行ったのに。あたし、免許取ったんだよ」
「あんたの驚いた顔が見たかったしね。そんな事よりさ」
「うん。・・・おかえり」
「ただいま」
今ならまだ間に合うかもしれない。
「あの時、ついていけなくて、ごめんね」
「別に。───待っててくれただけでいいよ」
「うん」
あたしの止まっていた時が動きだした。
大人になったリョーマと一緒に。
Fin
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どーも。佐波屋です。
早い事で、このサイトを立ち上げてから1年経っちゃいました。
これもみなさんの応援があってこそだと感謝しております。
これからものんびり更新は変わらないと思いますが(むしろ放置に近いかも)気の向くままに運営していきます。
お暇な方はこれからも佐波屋的空想王子にお付き合い下さいませ。
2007/4/25 佐波屋