立海同窓会
この季節になると思い出す。
全国大会。
懐かしいな。
立海で過ごした夏−…。
「あれ?」
私は足を止めた。
今すれ違った人…。
振り向いて後ろ姿を確認する。
「間違いない」
私は見覚えのあるその後ろ姿に声を掛けた。
「真田!」
驚いた表情で振り向いたその人は間違いなく真田だった。
私を見て不思議そうな顔をしている。
無理もない。
立海を卒業してもう10年近く経っている。
「私。」
「おお。懐かしいな。元気だったか?」
思っていたより早く気付いてくれたみたい。
「まーね。真田はどう?」
「俺は相変わらずだな」
「まぁそんな感じだよね。ねぇ。立ち話しもアレだし、どっか入ろうよ」
「ど、どっかって…/// まさかこんな昼間からか?」
「…喫茶店だよ…」
中学時代、男女交際などハレンチなー!とか言ってたけど、
今じゃ18禁隠語駆使してる立派な変態成人になっちゃったのね。
ま、想像してた通りだけどね。
私たちは手近な喫茶店の6人掛け丸テーブルに向かい合う形で座った。
真田との距離が近いのが本能的に嫌だったから、わざわざこの大きめのテーブルを選んだ。
「しかし、は綺麗になったな。気付いていたかもしれんが、皆の憧れの的だったんだぞ。かくいう俺も…///」
「ありがと。真田は全然変わらないね」
普通10年近く会ってなければどこか変わっているはず。でも真田は正に全然変わらない。
髪型も。顔も。しゃべり方も。
「テニス、辞めたんだってね」
「ああ。だががいればまた頑張れる気がするな///」
「怪我とか?」
「いや。スランプというべきか…。やはりお前が傍にいないと本来の力が発揮できなくてな///情けない話だが」
「仕事は何してんの?」
「仕事は………
だが!を養う為ならどんな辛い仕事もやってのける!」
……今までスルーしてきたけど。
やっぱツッコむべき?
なんか真田、必死にアピールしてるよね?
身の危険を感じた私は時計を見て立ち上がった。
私はさり気なさを装いつつ
「じゃ、そろそろ帰るね」
「も、もう帰ってしまうのかっ!?もう少し…」
昔流行ったチワワのように目をウルウルさせてすがりつく真田。
(う――わ――…・・)
手に負えんよ。
「(チッ!)じゃあ、電話してくるから、ちょっと待っててよ」
逃げ出してやる!と意気揚揚に荷物を持って店を出ようとした途端。
「逃げる気だな?」
(狽ホれちゃってるー!?)
仕方なく席に座り、真田に声を掛けた自分を恨む。
「ところでは、お付き合いをしている男性とかはいるのか?」
ほら来たよ〜;
真田タイプは少し優しくされると勘違いしちゃうんだよね〜…。呼び捨てだし。
「付き合ってる人はいないけど…」
「そ、そうか!!実は俺もいなくてな、現代風に言うと彼女募集中なのだが…、お前さえ良ければどうだろう…」
狽ィ前って!?
「いや、真田は無理だから!!」
「なぜだ?意外といい夫婦になれると思うのだが」
狽゚おと!?ありえない…!!
「実は言ってなかったけど、私、結婚して子供いるんだよね」
「なんと?先程、付き合っている男性はいないと…」
「だって、既に結婚しちゃってるもん」
私は真田の前に写真を置いた。
一枚は結婚式のケーキカットの時の写真。
もう一枚は子供と一緒に写った家族写真。
「じゃあね。早く仕事、探しなね」
私は伝票と写真をつかんで、逃げるように店を出た。
その後、真田がどうなったのか、どうしているのかは知らない。
Fin.