ファンム・ラブ








俺の名は真田弦一郎
言わずと知れた立海テニス部、副部長


並んで歩いているこいつは と言って最近隣に引っ越してきたばかりの一年生だ


「勉強はあまり得意じゃなくて運動神経も並レベル」 と謙虚に自己紹介していたがそこがまた可愛らしい


ここだけの話、どうやら俺にホの字のようだ


苦節15年、花形テニス部に籍を置きながら彼女がいないと言う事だけで、皆から言われのない侮辱を受けてきたが…


どうだ。俺達はお似合いのカップルじゃなかろうか!




ここは男を上げる為に部員にで も一肌脱いでもう事にしよう




、寄って行きたい所があるのだが、ついてくるか?」



部活がコート整備で休みになった今日、幸村の見舞いにを連れて行く事にしたのだ


「はい。大丈夫です」




実はこの行為には「やさしい真田先輩の演出」と言う下心が無きにしもあらずなのだが…


フハハハ!!が俺にメロメロになるのも時間の問題だろう







「ここだ」

着いた先は

「……病院…?」

「そうだ」

ナースステーションの受け付け 用紙に慣れた手つきで名前を記入して三階へのエレベーターへ乗る



あの人は?と聞くに幸村を紹介する


こいつは転校生だから知らなくて当たり前だ


「幸村、こいつはという」


「はじめまして部長の幸村精市です」


「あっです!」




なにやら緊張してるようだな


今日は程々にして帰るとするか










「真田さんは明日は部活ありますよね?」


病院からの帰り道、唐突にが尋ねてきた


「うむ、すまない」


「いえいえ、謝るような事じゃないですよ」









可愛いやつだ


明日は一緒に帰れないが、おまえが望むなら俺のアフターファイブはおまえの物だぞ


残念なのだろう?顔を見れば一目瞭然だ


は無理して笑っているように見える









あれから一週間後


最近練習ばかりでろくに見舞いに行っていないからな

幸村、キレてないだろうか…?

あいつの機嫌を損ねるのだけはどうしても避けたい



今日は一人で病院にやってきた


前回同様、受け付けに名前を記入し、幸村のいる個室へ向かう


「幸村、すまなかったな。なかなか時間が…」


「やあ真田、何しにきたんだい?」

俺は目の前に広がる光景を飲み込めずにいた

だからと言う訳ではないが、幸村が放った失言に対しても反応出来ずにいた


「そんな所につっ立ってないで質問に答えてくれないかな?」

「あ?あ、いや、ただの見舞いだが…」

「あ、そう。真田はもう来てくれなくていいよ」

「はぁ。…じゃなくて!…なぜここにがいるのだ?」

「紹介が遅れたね。俺の可愛い彼女だよ」







くわぁのじょだとう〜〜〜〜!!??

なんたる事−−−!!!




「いっ、一体いつから、そのっ! 男女の…おつ…お付き合いをしているのだっ!?」

動揺がバレないように自然に、さり気なくを意識して問い掛ける


ポーカーフェイスも中々大変だな


「ん〜…一週間前?だっけ??」

「うん。ちょうどそれくらいだね。前に真田さんと一緒に来たでしょ?あの後から」









俺は。俺は夢を見ているのだ

そうだ。白昼夢は俺の専売特許だからな!

むむ〜…





「あのさ真田。唸ってる所悪いんだけど、との楽しいひとときを邪魔しないでくれる?」


「フフ。そうですよ。気が利かないんだから」






「 俺は夢を見ているのだ−−−−−!!
〜〜!!」





泣きながら病室を飛び出た俺は幸村の言った言葉を思い出していた







『俺を戦力外通告するからだよ。フフ…』(注)小ネタ「真田幸村参照」






「恐ろしい男だっ!幸村!!」






「あはは。真田ってばみっともないな」

「言いすぎだよ?」

「あいつは妄想家だからウメも気を付けたほうがいいよ。以前、真田の脳内彼女になっちゃった人がいて 、なんだかすごく大変だったみたいだよ?」

「あー、そういえば目つきがいやらしい時あったなぁ。気を付けよっと」






Fin.