トップ2一緒








とても清々しい海の風に吹かれて、あたしは、目の前に広がる
海と
空の
境界線を、眺めていた。
地球の果てが伺えるその境界線は、ここが海の真ん中であるのを示すと同時に、周りに、この島以外、何もないという事を―――。








「ちょっ!どーゆー事!?説明してちょーだい!」


隣にいた幸村くんの肩を激しく揺さぶり問い詰める。


「いや、なかなか。近年まれに見るきれいな海だね」

「オイコラ。そこのチリチリ頭。のんきに感想なんか述べてる場合じゃないでしょーが。せ・つ・め・いしろって言ってんの!この状況を!!」

「うむ。気温34度といったところか。そよ風が実にたまらん心地よさだな」



「うちのトップ2はアホンダラスケかっ!?」



「真田はともかく、俺まで一緒にしないでほしいな。結論から言えば、漂着、したんじゃない?」

「幸村。俺はアホンダラスケではないぞ。しかし、漂着というのは正しい意見だな。見た感じ人の姿はない」

「他人事みたいに・・・」



なんでこんなところにいるの?なんて思わない。だってここまでの経緯をこの目で見てきたんだから―――・・・。



あたし達3人が漂着した島は直径、約200メートル程の本当に小ぢんまりとした孤島で、360度見渡す限り海しかない。
真田が言ったように人はおろか、生き物の気配すらない。
あたしは一緒に海を眺めている2人に視線を戻し、ため息をつき、後悔した。



「しかし暑いな」



たしかに。
頭上で照りつける太陽は容赦なく、そしてじりじりと体力と水分を奪ってゆく。



「・・・・・・せめて・・・今、一緒にいるのが柳か仁王だったらな・・・」



うまい脱出方法を考えてくれるかもしれない。
それどころか、こんな事にもならなかっただろうに。
後悔したってしょうがない事だってのはわかってる。でも思わずにはいられない。





だって一緒にいるのがこの2人だから・・・!





「地球に優しく真田に厳しいエコ派の俺でも、今の言葉は聞き捨てならないな。まさか君は俺が柳や仁王ごときに劣るとでも言いたいのかい?」

「いや・・・、軽く熱中症になりかけてる人間に言われてもさ。幸村くんはそこの木陰でじっとしてなさいよ。ここまで来てくれる親切な救急車ないだろうし」

「そこまで言うならしょうがない。向こうでおとなしくしてるよ。なんたって地球に優しいがモットーだからね」



真田に担いでもらって木陰へ移動する幸村くん。
重症じゃん!!!



ふと思い付いて携帯を取り出す。

「とりあえず助けを呼ばなきゃ」



あ!・・・今月、使いすぎで止められてるんだった・・・。



「幸村くん、携帯、持ってる?」

木陰ですでに魂が抜けかけている程にぐったりしている幸村くんに聞いてみる。



「家で充電中」

「あ、そうですか・・・」



まったく役に立たないな。あの半病人は!本気で柳や仁王のが良かった。
真田はもちろん携帯なんて持ってないだろうし・・・。
いよいよヤバいんじゃないの!?



諦めムード全開のあたしに真田が声をかけてきた。



「携帯電話機とはこれの事だろう?」



真田の手には今まさにあたしが捜し求めていたものが!
一番持ってない率の高い真田が!



「ナイス真田ー!あんたもたまには人の役に立つじゃん!」



誰でもいい。
とにかく誰かに連絡とって救助を呼んでもらおう。



「はやく電話して!」

「うむ・・・」

「なにもたもたしてんの。もう、あたしが掛けるから、かして!」



半ば無理やり真田の手から携帯電話を奪い取る。

ん?


なんか妙な違和感がある・・・。



「無駄だと思うよ」



木陰で静養中の幸村くんがあたしを制止する。
その言葉にピンとくるものがあった。



「真田、これって・・・もしかしてキッズケータイ?」



あたしの言ってる意味がわからないというように首を傾げた真田と微笑を湛えた幸村くん。



「はぁぁ〜・・・。まぁいいわ。で?どこの番号登録してあんの?」

「自宅と警察と番号案内だ。それ以外にはかからん」



なぜに番号案内が登録してあるのか・・・。真田母も中々のツワモノと見た。



「・・・そう。あんた、小学生か老人以下の扱いだわね。で、どれが警察なの?」

「このボタンだ」



あたしは早速『警察』が登録されているという2つ目のボタンを押す。



『ツー・ツー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「あれ?」



一旦電話を切り、もう一度同じボタンを押す。



『ツー・ツー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』



「通じない・・・」



耳から放し携帯の画面を見る。
そこには「圏外」のマーク。






「この役立たずがーーーーー!!」








「な、な?」

あたしの逆鱗に触れた真田はなにがどうやら分からない様子。
木陰で腹かかえて笑ってる幸村くんに向かって携帯を投げつけてやった。



「一体どうすんの!?こんな所でどうやって助けを求めればいいのさ!?」



半泣きのあたしをよそに、お腹がすいたとわがままを言い出す幸村くん。
・・・そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。

俺が気合でフルーツを採ってやると意気込む真田。
・・・どこにフルーツの生ってる木があるっていうのよ。

焼き魚が食べたいと真田の意見を一刀両断する幸村くん。
・・・へこむ真田。





もうやだ・・・っ!!・・・誰か助けてーーーー!!!























「・・・ってなるに決まってるでしょ。海なんて却下!」

「なんでさ?それはそれで楽しそうじゃない」

「うむ、己の鍛錬にはもってこいではないか。何が不満なのだ」





何が不満って・・・全部だよ!断固拒否!!



かくして、立海、海辺で焼き魚と花見とだんごとおまけで新入生歓迎会・部長案〜は闇に葬り去られた・・・。






Fin.








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こんなオチでごめんなさい。