立海








「みんな集まったみたいだね」



今日この日、立海テニス部に於いて、厳かにある会議が行われようとしていた。





「幸村部長、いったい何のさわぎっすか?」

「仁王君はなにか聞いていないのですか?」

「残念ながら、何も聞いちゃおらんのう」


ざわめく部室。
そう。今回は幸村部長の名の下にレギュラー全員が集まっていた。


「悪いけど、誰か書記をやってくれないか?」

「俺がやろう」


ホワイトボードを指差し提案した幸村に、柳が返事を返す。


コの字型に並べられた机の中央に幸村と柳が、向かって右側にジャッカル・切原・丸井。
左側には真田・柳生・仁王が座っている。
そして今回の会議にこの並び順は全然関係がないので気にしなくてもよい。
幸村の背後にホワイトボードが用意されているがこれもまた必要ない情報だ。

幸村は部室内を大きく見回してから、呼吸をひとつおいて立ち上がった。


「では始めよう」


いつものミーティングとはまた違う空気の部室内に幸村の声が響く。と同時に柳はホワイトボードの前に移動し大きくこう書いた。


『真田弦一郎の言動について物申す』


それを見た真田は明らかにうろたえはじめた。


「なんなのだ?このお題は!?俺が一体なにをしたというのだ!?」

「被疑者、前へ」

「俺はこんな会議の議題になるような失態をした覚えはない!なにかの間違いだ」


淡々と続ける幸村に訴えるように弁解するも空しく、自主的に立ち上がった勇者二人、切原と丸井の手によって前へ引っ張り出された。
二人それは楽しそうに、日頃の恨み辛みをぶつけるべく乱暴に真田を扱った。


「精市・・・!俺はっ・・・!」

「ストップ」


幸村が真田を遮る。


「それだ。今のセリフ。真田さぁ、いつから俺の事を名前で呼んじゃってる訳?大体、真田が俺をそんな風に呼ぶ事を許可した覚えないんだけど?」

「なんと!?今まで(このサイトでは)精市と呼んでいたではないか!精市と呼んでは駄目なのか?」

「当たり前だよ。だって俺らそんなに仲良くないし?(原作では幸村って呼んでるくせに)
もしかして俺のこと好きになっちゃったとか?うわぁ怖い。あ、柳は友達だから俺のこと精市って呼んでくれて構わないよ」

「ぐっはぁ!!すべて誤解だし何気に傷ついたぞ精市!」

「だーかーら。名前で呼ぶなって言ってんのがわからないんですか?真田くん」

「その呼び方なんかいやー!!」


柳はホワイトボードに
『弦一郎は今後一切、幸村との繋がりはテニス部のみとする』
と書き記した。


「他に物申す者は?」

「俺いいっすか?」

「はい赤也」

「全国大会の時に思ったんすけど、真田副部長ふざけすぎじゃないっすかね?」

「ふざけてなどおらんわ!」

「あぁ、あれだろい?」


丸井が切原の提案に同意したかのように口を挟む。


「む。あれとはなんだ。具体的に説明してもらおう」

「手塚戦の時だよな?」

「そっす。ラララライってやってました」

「ラララライなぞやっとらんわ!『雷』だ。たわけ!」

「やってたっす!」


幸村は頷き、それを確認した柳はホワイトボードに
『弦一郎は今後一切、ラララライ体操をしてはならない』
と書き記した。


「俺もいいかの」

「仁王、どうぞ」

「関東大会決勝戦なんじゃが」

「俺がまだ入院してた時だね。続けて」


先を促す幸村。


「Mっ気全開の真田は全員から鉄拳制裁を要求しちょった」

「なっ!?あれは無念にも一年に負け、立海を率いる者として示しがつかんと・・・」

「ジャッカルが軽くはたいたら、鬼のような形相で『もっと強く!』とかなんとか言っちょった」

「あの程度では制裁にならんどろうが!たわけ!」

「俺が強く平手打ちしたら嬉しそうな顔しちょった。ある意味昇天じゃの」

「ち、違うぞ!誤解だ!刺激を求めたわけでは・・・!」


ため息を落とした幸村は肩をすくめる。


「俺のいない間に好き勝手してくれたな・・・。柳、書いてくれ」


柳はホワイトボードに
『弦一郎は今後一切、自己の性的欲求の処理を強要してはならない』
と書き記した。


「狽サの書き方なんかいやー!」

「うるさいよ真田。他には?」

「よろしいでしょうか?」


これまで傍観していた柳生が席を立つ。


「どうぞ」

「じつはですね・・・」


ゆっくりとした口調で話し始める柳生に全員の視線が集まる。


「真田君の・・・その・・・バレンタインチョコ獲得数というのが・・・納得できません!」

「なんとっ!?」

「あーあれね・・・。実はそれ俺も気になってたんだよね。負け惜しみに聞こえるとイヤだったから言わなかったけどさ」

「この件に関しては俺も予想不可能だった・・・。いや、正確には『予想だにしなかった』というところだな」

「実際2位はありえねーだろい?」

「全員同じ意見かよ」

「だって俺ら差し置いてっすよ?この真田副部長が」

「裏工作の匂い・・・プリ」

「待て待て待てーい!!!これは純粋な結果であろうが!それを寄ってたかって・・・!」

「柳」

「うむ」


柳はホワイトボードに
『弦一郎は今後一切、製作者側に賄賂的な物を渡して偽装工作をしてはならない』
と書き記した。


「ちょっと待つのだ蓮二!」

「決定事項だ」

「じゃ、ちゃんと守ってね。真田さん」

「いやーーーーー!!」

こうして立海テニス部にとって重要な「立海会議」盛況の内には幕を閉じた。






Fin.


************ 最近知った事実をネタに。
真田って幸村のこと「幸村」って呼んでたんですね。今まで「精市」だと思い込んでた。
佐波屋