消しゴム
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「えー加減にせーや」
頭と背中に消しゴムのカスをいっぱいつけた忍足が、小声で、我慢ならんとばかりに振り向く。
「なんだー、忍足うるさいぞー」
「すんません・・・」
今は授業中。先生に叱られた忍足はあたしに未練がましい視線を残して前に向き直る。
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる。
ちぎって・・・・・・・
投げる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「おまえなぁ」
さらに消しゴムのカスを増やした忍足はさっきより大きな声で振り向く。
もちろん先生も二度目は容赦ない。
「忍足、は居残りで反省文書いとけ。今日中に提出だぞ」
「・・・なんであたしまで・・・」
「あほ。元はといえばお前が悪いんやろ」
「忍足がいちいち騒ぐからじゃん」
「誰だって騒ぐわ、ボケ」
「コラーお前ら反省文だけじゃ足りんかー?」
「すんません・・・」「すいません・・・」
放課後、ブツブツ文句を言う忍足と居残りで反省文に取り組むあたし。
「ねー、反省文ってなに書くの?」
忍足の背中をシャーペンでつつく。
「そりゃ反省してますって書くに決まってるやろ」
「そのまんま書けばいいの?」
「・・・・・・書きたきゃ書きぃや・・・」
「あ。今、面倒臭い奴って思ったでしょ?」
「今だけでなく毎日思ってます」
「あっそー。ま、あたしは反省文を毎日書くような不真面目さんとは違いますからね。教えてくれなくてもいいもーん」
「毎日ちゃうわ。た・ま・に、や」
「ばーか」
消しゴムを力いっぱい投げつける。勢い良く忍足の右側頭部にあたった消しゴムは、これまた勢い良くポーンと跳ね返ってどこかへいってしまった。
「・・・消しゴムなくなった・・・」
「そらご苦労さん」
「間違えたのに、消せない・・・」
「そら大変やな」
「貸して」
「いやです」
「いーじゃん」
「あほ」
「あほってなによー。バカって言われるよりむかつくー」
「うるさい女やなーほら、貸したるわ。投げんなや?」
手だけ後ろに回して消しゴムをあたしの机の上に置く。
「ねー、これもらっていい?」
「あかん」
「なんで?」
「またちぎって投げるやろ」
「ちぇ」
二人しかいない教室に忍足の字を書く音が響く。あたしは借りた消しゴムで字を消す。
「・・・半分なら、やるわ」
「ありがと」
体ごと振り返りあたしの手から消しゴムを受け取り、半分に割って、その片方をまたあたしの手に乗せる。
「なぁ」
「ん?なに?」
「好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると、想いが通じるって占い、知っとるか?」
「聞いた事はあるけど・・・」
「ちゃんと使い切ってや」
手の上の消しゴムにはあたしの名前が書かれていた。
それに気付いた忍足が慌てて何も書かれていない自分の分の消しゴムとあたしの手の上の消しゴムを交換する。
「ふふふ。遅い、もう見ちゃった」
「気持ち悪いやっちゃなー」
背中を向けたまま、必要以上にシャーペンを走らせる忍足。
ふーん。ちぎって投げても、効果あるんじゃん。
「はよ書きや、提出してくるで」
ちらっと見えた忍足の顔が赤いのは、夕日のせいかそれとも・・・。
Fin.
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知ってる人は知っている。さんまさんとしのぶさんの出会いのきっかけになったドラマ風。