の扉








俺には今、気になっている子がいる。
サバサバしていて、姉御肌、どちらかと言うと女っぽくなくて、男女問わず人気がある。
決して好きなタイプではなかったけど、なんだか気になるんだ――。




「すいません。突き指しました」

「あ、やっぱり鳳くんだ。テニスで突き指って一体どういう練習してんのさ 」

「あぁ俺、ドジだから」




キミが保健委員の当番をしている火曜日、俺は頻繁に怪我をする。
理由がキミに会いたいから。なんて言ったら呆れられるだろう。


手際よく包帯を巻いてくれるキミに、そして少し荒れた手に、見とれてしまう。



「どうしたの?そんなにジッと見て」

「あ、ごめん。上手だなーと思って」

「よく怪我する人がいるからね。練習になるよ」



俺は苦笑いを返す。




「キミはなんでも出来て、頼れるって言うか。友達も多いし、それって一種の才能だよね。羨ましいよ」

「あはは。ありがたく受け取っとくよ。でも鳳くんだって友達多いじゃん」

「そうかな」

「そうだよ。羨ましいのはこっちだよ」




「はい、できた」と両手で俺の指を軽く包んだ後、その手でペンを持ち、日誌に記入する。



その後ろ姿を眺めながら、来週はすり傷でも作ろうか。なんて企んでみる。




「俺、さ」




怪我の理由を知ったらキミは驚くだろうか。
それとも……。




勇気を出してノックしてみよう。
そしたらキミの答えはわかるだろう。










Fin.