はぁ…けだるいわぁ…。


小鳥囀る爽やかな朝とは裏腹に、あたしは昼間の憂欝夫人顔負けの長いため息をついた。


学校行きたくないなぁ…。


これはいつもの事。


「確か現国テストあるっていってたしなぁ」


今日の本音はこれ。別に苦手教科でもないんだけど、基本的に面倒臭い事からは逃げちゃうタチ。


「あぁ、行きたくない行きたくない…」


もちろんそんな訳にも行かず、母親に急かされて家を出る。


そして−−−−−








玄関開けると長いリムジン。






煤c…!?


なんでこんな平凡サラリーマン宅に似付かわしくないものがあるんだろう?


まさかっ!父さんフルローンで買っちゃったとか…!?


唖然としていると、車の中から真っ黒のスーツに身を包んだ、サングラス男達がぞろぞろと降りてきた。



やはり他人様の所有物だったようで少し安心。
家のローンも終わってないのにバカな買い物してなくて良かった。




って、どっか駐車場に停めろよ!人ん家の前で迷惑な!
一体どこのヤクザだよ!!



とか思ったケド、恐いから口には出さずに、もちろん目も合わせない。


「いってきまーす…」


遠慮がちに、かつ、自分はこのグラサン軍団とは関係ないんだ。という意志表示を込めて自宅の誰もいない玄関に向かって一人芝居なんかしてみる。


学校に行こうと黒塗りの車の隙間を擦り抜けた途端、視界は遮られ、意識が遠退いた−−−…‥
















意識を取り戻した時、私は見たこともない場所にいた。


頭がくらくらする。多分クロロホルムのような物で眠らされてたんだ。


状況把握と同時に、体が全て正常に動くかをチェックする。


どうやら怪我などはしていないみたい。縛られてもいない。


しかしここはどこだ?



とにかく綺麗な…そう、まるでスイートルーム!


一体誰がこんなとこへ連れてきたんだろう。


天井高ーい…。調度品もすごく高そう。


見回しても、一向に思い当たる節もない。


見知った物もない。








( ̄□ ̄;)








見知ったモノ……発見…。









「よう。、えらくのんびりと寝てやがったな」






( ̄Д ̄)跡部イター−−−!!





「あたし、帰りますんで。じゃっ!!」


スチャ!と手を挙げ「あたしは何も見なかった」と言い聞かせ、その場を逃げるように去ろうとする。


「おいおい、そりゃご挨拶だな。が目覚めるまで待っててやったんだぜ?」


「そりゃどうも。って、んなこたぁ頼んでない!それよりあんた、あたしを拉致ったわね?目的を言いなさい。今なら大サービスで慰謝料だけで許してあげるわ」


コロニアル調な、とにかく高そうな椅子に足組んで偉そうにふんぞり返って鍵をちらつかせてる跡部。


ドアを開けようと飛び蹴りや体当たりしてみたけど、びくともしない。完全に閉じ込められてる。


「慰謝料なんかは払わねぇ。は今から俺様を盛大にもてなせ。命令だ」








…普段の言動から予測はしてたけど、この人もしかして。










とっても痛い人!?







「あんたねぇ。あたしを乱暴に扱っといて何様のつもりよ?」

「あーん?んなわかりきった事をわざわざ聞くな」

「…そうだった…あんたは何様でもない、俺様だったね…」

「ふん。わかりゃいい。それでどうやって俺を楽しませてくれるんだ?」


相変わらずえらそーな態度で、更に薄ら笑いを浮かべている。



ちゃん身の危険察知!!



「あたし、現国のテスト受けなきゃなんだよね?」


「んな事はどうでもいい。それより大事なセレモニーがあるだろ?アーン?」


んーと


…殴っちゃおっかな?





自分の言いたい事だけを上から喋ってくる



「その大事なセレモニーとやらの前に拉致った理由を聞かせてもらおうじゃないの」


跡部に負けない位でかい態度で聞き返す。


ついでに跡部の前に仁王立ちで、両腕を腰に当て、跡部を見下ろしてやる。


あたしが跡部に対抗するには「実際に立ち上がって見下す」しか出来ないのよ!




それなのに跡部ときたら、鼻で笑いやがった…っ!


ムッキ−−−−!!
むかつく!!(`田´)














「今日は知っての通り、俺様の誕生日だ」




…いや、知らなかったし…



「どうせの事だ。正面きって誘っても恥ずかしがって来ないだろ?そこで頭と金を使ってここへ呼んだ」


呼んだって…連れ込んだの間違いじゃ…?


「頭の使い所間違ってますよね?」


「金も使ったんだぜ?///」


狽サこでなぜ照れる!?



もうやだ…。こいつと喋るの…。
だれか助けて(T□T)



しかし悲しいことに周りに頼れる人は誰もいない。いるのはなぜか赤面の泣きぼくろだけ。


カムバック!平穏な日常。
あたしは普段あまり使わない頭をフル回転させて、今後の対策を練る。





脳内会議の結果、適当に話を合わせる事に決定しました。


「だれも行かないなんて言ってないじゃない?ちゃんと誘ってくれれば…」


「…来たってか?」


「ううん。断固拒否」


「( ̄□ ̄;)」



あぁっ!つい本音がっ!会議台無し!!あたしってばピュアガール!



「…ま、まぁいい…。跡部グループの情報網を最大限に駆使して、おまえが俺の事を好きだと言う情報はつかんでいるからな。さぁ存分に俺様を好きにするがいい」






どっからそんな怪情報を…!

しかも最大限に駆使してガセネタ掴まされるとは、地に落ちたな、跡部財閥よ…。


跡部の未来予想図を思い描くと目頭が熱くなった。


「あんたも大変ね」


「あーん?何訳のわからない事言ってやがる」


「ま、あたしには関係ない事ね。それよりあんた位の人間の誕生日なら財界とかで盛大にパーティとか普通にあるでしょ?」


「ばーか。んな集まりよりこっちのがおもしろいだろ?」


面白がるな〜!!こっちはいい迷惑だ!


「アァ、ソウデスネ。ところでここはどこ?」


「ふっ。よくぞ聞いてくれたな。ここは噂に名高い跡ベッキンガム宮殿。略して俺様の家だ」












「…………(・д・)」








なんかもう、跡部のしてやったり的な顔にやけに腹立ったので、聞こえないフリをしてやったよ。





ん〜。ということは、部屋の外には跡部の手先であるグラサン軍団が待ち構えているって事ね。しかも鍵付きで。



「照れるなよ。いいんだぜ?の気が済むまで俺様を快感の渦に沈めろよ」




どこまで俺様主義なんだ?
そしてこの歪んだ自信はどこから湧いてくるんだ?
だんだん命令とやらが卑猥になってきてないか?
なぜあたしが奉仕しなけりゃならん?




まず脱出法を考えないと、あたしのぴちぴちの肉体が危険だわ!





ウソがつけないあたしに、一休さん知恵をくだされー!!



チンチンチンチンチンチーン!














「実は跡部に、どーしても今日中に伝えたいことがあるんだけど…(クネクネ)」


「フッ…やはりな。遠慮せずに言ってみな…///」


待ってましたと言わんばかりに赤面跡部が言う。


照れるなよ!気持ち悪い!


「言いづらいなぁ(もじもじ)」


「恥ずかしがる事はねぇ。さぁ、想いのたけを存分に俺様にぶつけてみな」


「跡部の顔を見ながらなんて、恥ずかしくて言えないよ。そうだ!メールで送るからあたしのいない所で見て?今から送ってもいいかな?(ドキドキ)」


「ふっ、わかった」


チョロイな。跡部よ。


「じゃあ、あたし外でメール送るから。絶対こっち来ないでね」


「ああ。わかってるよ」


パチコーン!!


変な音だったけど、跡部お決まりの指パッチンを合図に、グラサン軍団が部屋に入ってきた。


驚いた事に樺地が交ざっていた。


「こいつを外まで送ってやれ」


「ちょっ、ひとりでいい!…です。恥ずかし乙女?えへへ」


「フッ…可愛い奴だ…。おい!お前等はここで待機だ。、俺様を痺れさせるセリフ、待ってるぜ。さぁ行ってこいよ」




一体何を期待してるのか、最後の「行ってこいよ」がいやに甘ったるい声だった。

















跡ベッキンガム宮殿よ。さらば!



あたしは門までの長ーい小道を駆け抜けた。



あぁ!生きてるって素晴らしい!!

シャバの空気のどんなにおいしい事か!!

五体満足、無事に魔王の要塞から脱出成功したよ。お母さん!




時計を見ると昼1時前。



「おなか空いたー。あ、あのパン屋さん行こーっと」


足取り軽くおいしいと評判のパン屋さんへ急ぐ。





おっと!忘れるとこだった。


跡部にメール送っとかないとね。


「ブラックメール、送信、っと!」



さぁ売り切れちゃう前にパン屋さんへゴーよ!










♪♪ ♪〜 ♪♪

「やっと届いたか…。遅すぎて、危うく携帯会社を買収する所だったぜ。なぁ樺地」

「ウス」

「なになに…?」






2006.10.4 12:48

FROM

Subject 告白します!


今日、跡部に会って
ずっと言おうと思ってて
言えなかった事があるんだ


思い切って告白します


おどろかないでね





えっと、泣きぼくろから
毛が生えてたよ!


笑えるから早く
剃る事をお薦めします!


慰謝料請求しとくから
よろしく!(゚ー^)b

−−−END−−−−



「……………フッ」



「照れやがって……樺地!ヒゲソリだ!」

「ウス」





「跡部さん…」

「なんだ?樺地」

「お誕生日おめでとうございウス…」

「!!…樺地お前ってやつは…!(号泣)ウスの使い所間違ってるが今日は許す…!!」

「ウス!!」












HAPPY BIRTHDAY








Fin


どーも。佐波屋です。

誕生日と言う事で、はじめは激甘夢を予定してたんですが、今回は見送り、いつもの勘違い跡部様にしました。

つか、すいません。ネタが思い浮かばなかったんです〜!

愛故、の結果です。



今更ですが、誕生日企画物の全てについてるタイトルの「F/B」は「ファーストバースデー」の略です。

来年S/Bで祝えたらいいなと思ってます。

そして今回のタイトル「矜恃」←きょうじと読みますが、意味は自分が一番。自分は偉い。自信満々。優越感たっぷり。など、要するに跡部本人の事なんですね。
憶えておくといつか役に立つときがあるかもしれません。(いや、ないな)



2006.10.4