口をあけて








※ほんの〜り微か〜にお下品だったりするので、極度に苦手な方はご注意願います。










3年A組の教室で、今日も柳生とあたしは仲良くお弁当を広げています☆


「はい、あーんして」

「遥さん。私に跡部くんのモノマネをさせる気ですか」

「おーぃ」


出ました、柳生の素ボケ。

そんなところも可愛いわけですけども。
柳生のことを「紳士」と思い込んでいる皆々様はそんなことを知るまい!


「おや、違いましたか」

「当たり前田のクラッカーでございますよ」


そんなことを柳生に要求するまいに。
…しかし見てみたい気にはなってきましたがね。


「すみません」

「じゃあもう一回。すみやかに口を開けてちょーだいね、あーん」

「ええ。あーん……遥さんのタコさんウインナーはいついただいても絶品ですね」

「オイ、コラ」

「え!?遥さん?」


にこやかに手作りおかずを褒めた柳生は、まさかここであたしがキレるなんて微塵も思っていなかったようで。
焦って箸からご飯を落としたりしてますよ。



「どうなさったのですか」

「…それ本気で言ってんの」

「私は何か失礼な事を申し上げたのでしょうか」

「えーマジで気付いてないの?凹むわ〜」

「そんな……私は自分のミスにも気付けず遥さんを傷付けるなんて!申し訳なくて眼鏡も透ける思いです」

「……」


なんですかそれは。

箸を置いて両手であたしの肩をつかんで熱くなっているようだけど、意味がわかりません。


「ですからどうか機嫌を直してくださいませんか」


眼鏡を透けさせるから機嫌を直せって意味なんだろうか…?


「あ〜なんかもういいや」

「こんな私を許してくださいますか」

「うん、なんか馬鹿らしくなった。ただウインナーはタコさんじゃなくてカニさんだったってだけだし」


うん、こんなことで一瞬でも腹を立てた自分が馬鹿らしいですわ。


「ああっ、すみませんでした!私としたことがなんてことを。タコさんウインナーとカニさんウインナーを間違うなど!」

「ううん。いいよ、もう…」


柳生が肩をつかむ力を強め、尚且つ顔を近付けて謝るものだから、あたしだって照れ臭くもなりますよ!
マジな顔の柳生はハンパなくカッコイイんですからね!これでも!


「では改めて言い直させていただきます、遥さんのカニさんウインナーは絶品ですね」

「…ありがとう」

「いいえ。あの、貴女を悲しませてしまったお詫びと言ってはなんですが、私のあんかけ肉団子を差し上げます」

「いいの?」

「勿論です」

「わーい!柳生のお母さんの肉団子って美味しいんだよね。じゃあ遠慮なく」


前にもらった時に頬っぺたが落ちそうになった感動のあの味を再び!
勇んで箸を握ります。


「ちょっとお待ちください」


柳生のお弁当へと箸をのばしたあたしを制止して、柳生は肉団子を箸に取り──。


「遥さん、あーん」

「えっ」


いつも自分からしかしたことのなかった“あーん”に戸惑うあたし。
ちょ…照れるんですけど!


「はい、あーんしてください」

「……アーン?」

「いやいや跡部くんのモノマネではなくてですね。似てますけど。さあ口を開けてください」


似てたの!?

自分の意外な特技を発見してしまいました……。


「あ、あーん」

「もう少し大きく開けてくださいますか?それでは入りませんよ」


確かに箸に挟まれた肉団子は少々大きめで。
控えめに開けている口には入りそうもないのですが、ね。


「恥ずかしがらずに、さあ」

「うっ…あーー」

「もう遥さん!?コレが入るくらいに口を大きく開けたまえ!!」

「ちょっと…柳生ストップ!!」


なんだかマジで恥ずかしい感じになっていやしませんか!?


「何故ですか、遥さんはコレが大好きでしょう。素直に口を開けてくださればよいのに」


だから少しばかり……
今は「コレ」でなくはっきりと「肉団子」と言って欲しい気が……いや、まあいいや。


「比呂士さんよ、これ以上はカンベン願いたい」

「おや。いつもなら拳くらいやすやすと入るくらいなのにどうしました」

「それはどこの組長ですか」


あたしはそんな特技を披露した覚えありません!
なのにどんだけ口がでかいイメージなんですか!


「それがーちょいとばかし不都合がー」

「遠慮なさらずに話してください」


「あのね、昨日赤也と一緒に昆布を、」

「昆布?切原くんの頭は昆布ではなくワカメでは」


……。
もしやあの“ワカメ野郎発言”って実は柳生の素の思いだったんですか。

──そーではなくって!


「赤也と休憩中のおやつにおしゃぶり昆布を食べすぎて、顎が痛いからあまり口が開かないの」

「なっ!切原くんと…お、おしゃぶり…?私というものがありながら!!しかも顎が痛くなる程って一体どれだけですか!?」


ちょーーーっっ!
やぎゅーさぁぁぁぁん!


「落ち着いて!なんだかすっごくハレンチな感じになっちゃってるから」

「ハレンチ?何のことです」


わかってないんですかい。

わかって言ってたらもっと嫌ですけどもね。


「私もおしゃぶり(昆布)を…」

「何故“昆布”を省略するのよ」

「私も(一緒に)食べて欲しい…」

「その“一緒に”を省略しないでもらえますか。今度一緒に食べるから」

「約束してくださいますか」

「約束するから」


どうしてそこまでおしゃぶり昆布にこだわるのでしょうか。


「ありがとうございます!遥さん、大好きです!!」

「……アリガトゴザイマス」


我ながらそれでいいのか!?…と思わなくもないのですが。
やはり柳生に「大好き」とまで言われてしまいますと。

…ね。


「──ということで、肉団子は小さく切り分けますので、あーんしてください」

「……ハイ。」

「はい、あーん」

「あーーーん」











〜*〜*〜




「アレは…。この上ないくらいにバカップルと捉えてええんかの?」

「……たたたた、たるんどる!」


柳生に用があってA組を訪れた仁王くんと、少し離れた席の真田くんが、他のクラスメート達を代弁するかのような会話をしてるだなんて。

勿論あたし達は知らなかったし、関係ないことなのでした。




END。







*****


8400HITのキリリク夢でした。

佐波屋さま、少しはギャグになっていますでしょうか…??


お相手が柳生とかテメェの趣味に走ってんじゃねーよ。
ですとか、
微かにとはいえ下品なこと書いてんじゃねーよ。
ですとか、
どーせならもっと下品にしとけよ。(?)
ですとか、
そもそもどこがギャグなんだよコラ!
といった苦情は喜んで受け付けます。





また結局食べ物絡みですが、水城はもうそれ以外は書けないのかもしれません…。
(意外と重大な告白)

おしゃぶり昆布がわからない方はおつまみコーナー等を見てみてください。たぶんあります。
美味いです。















**水城様から頂きました!
読み始めは「ん?下品?」とか思ってたけど、あーこういうことね。と。
甘い柳生もなかなかいいんでないかい?うふふふふ。
水城様、ありがとうございますっ!!
佐波屋 **