】宍戸の苦悩








嵐のような休日・・・。

昨日の出来事は、この言葉が一番似合うと思う。




迫り来る黒の恐怖

そして、カタカナの飛び交う会話。




トラウマになること必須だぜ?
いや、冗談とか抜きで。




俺は一生、あの家のコーヒー臭を忘れない。








東京に帰って来れたのが奇跡みたいで。

帰ってからぶっちゃけ泣きました。(何とでも言え)






多くは望まない。


俺は、"平穏"だけあればいいのに、







亮、私・・・向こうに財布忘れたみたいなの・・・









俺の波乱万丈は、今日も続くんだ。


           早朝からバスに乗り込み、

昔の記憶をたどってやって来たのは・・・





「ここがジャッコー君の通ってる学校?」


「ああ。
それと、ジャッコーじゃなくてジャッカルな。」





神奈川県、立海大付属中学校。


あんま良い思い出もねぇし、来たくなかったのが正直な感想。





「立海・・・?何か、校舎が薄汚い・・・。」

ビックリするくらい容赦ないなお前。」



「だってー。」

「だってじゃない。
それに、今日は馬鹿のせいで此処にいんだろが。」


「馬鹿って!!・・・まあ、そうなんだけど。」







校門付近でうろつく俺たち2人。


さっさと入って行きたいんだが、部外者なだけに一歩がなかなか踏み出せない。




立海の生徒から見れば、結構な不審者だよな。







「薄汚いとは言ってくれるのう。」






        独特な方言。

聞き覚えのある嫌な声だ。




声のする方向を見ると、そこには案の定・・・




「・・・、仁王。」


「ククッ、そういうお前さんは氷帝の宍戸じゃろ?」





妖艶に笑う詐欺師・仁王雅治。

会いたくない奴に会っちまったぜ。





「・・・、隣のお嬢さんは誰じゃ?」



「私?」


「他に誰がいるんじゃ?」




仁王の何気ない質問。


それなのには、不自然なほど俺を見てる。




「なんだよ。」

「・・・亮、




知らない人だけど、名前教えても大丈夫かな?


お前は幼稚園児か!!!つーか空気読めよ!!





「・・・じゃぁ、亮の大切な女性(ヒト)ですっ。テヘ☆」


そーーーじゃなくて!!!勘違いされっだろ!!?
名前!!お前の名前だよ!!」




「なーーんだ、名前かあ。
亮のせいで変な恥かいちゃったよ。」

「それどう考えても俺のセリフじゃね?」




ケタケタ笑うは放置して、仁王を見ると・・・




「あれ、いねぇ・・・。」


姿が見えない。




「あ。」



無視されたことが相当ショックだったのか、俺たちから離れた所で体育座りしているのを発見。






・・・行くぞっ!!」

「えっ?あ、ちょっと待ってよーーー!!」






男同士、何かを察せずにはいられなかった宍戸であった。

        仁王を置き去りにして、足早にテニスコートへ。





「亮、ジャッカルくん見つけられた?」

「んー、あんな目立つ奴すぐに見つかるはずなのに・・・。」



コートを見渡すものの、目的の人物が見つからない。


すると

おい。



ギャーーーーーーーーー!!


、よく見ろ。」



後ろからいきなり掛けられた声の主は

「ジャッカル桑野だ。」

「桑原だっつってんだろが!!!」

「あ、わり。」


桑原な。(半分わざとだったけど)







「・・・まあ良い。
お前ら、神奈川県まで来て何してんだ?


まさか、また俺んチに・・・「ないないない



ま、これは否定して正解だな。

グッジョブ



軽くショックを受けてるジャッカルを無視して本題に入る。

(俺は早く帰りたいんだ!!)



 

「実はね―・・・」 
              「うちに財布を忘れたぁ?!」

「多分そうなの。
って言うか、それしか無いと思う。」



「それは大変だな・・・。
で、どんな財布なんだ?色とか、形とか。」


ジャッカルは手に顎を…じゃない、顎に手を置いて考えるポーズをとっている。




にしても、ジャッカルって相当良い奴だよな。

知り合い程度の奴に、こんなに親身になれる訳だし。



人は見かけじゃないぜ・・・。






「普通のだよ。すごくシンプルな長財布。」

「長財布?」


「あぁ、あれか。白いやつ。」

「そうそう。手触りが良くて気に入ってたのにー。」





「白くて、手触りが良い・・・。」



ジャッカルの顔が、少し曇る。

というより、少し神妙な・・・って感じだな。




「うん、知らないかな?」




「・・・その財布、もしかして内側にブランド名の焼印が押してあったりするか?」



「うん、あるよ。」

「そんでもって、限定品・・・とか?」

「そうなの!!数量限定で、激レア!!
シリアルナンバーは確か・・・「102」」






見事にハモった二人の声。



「・・・え?」

「はあ・・・やっぱりな。」

「やっぱりってどういうことだよ。」




ジャッカルは、激言いにくそうな顔をしたが、

ゆっくり話し始めた。



        「お前たちが帰ったあと―・・・」



―回想シーン―



「ジャッコー!!コレ見テヨーー!!」


いつも以上にテンションの高い親父が俺の部屋に入ってきた。

手には、白い長財布。




「・・・ん?どうしたんだよ、その財布。」


「イイデショー☆」


「んな高そうな財布どうしたんだって聞いてんだけど。」




「・・・。
コレ限定品ナンダヨーー☆☆」

「(話反らされた?)だから、どこで買ったんだよ。」




「・・・貰ッタ。

「は?」

神様ニ貰ッタノ!!

「はぁ???」

「アナタガ落トシタノハどの財布デスカ?
コーヒー臭イ小銭入レ?ソレトモこの白い財布デスカ?っテ!!」





―回想終了―



「俺も変だとは思ってたんだが・・・スマンっ!!


頭を深く下げて謝罪する。

いや、許されないかもしれない。



目を強く瞑って、二人の言葉を待つと・・・


「ジャッカルー、お前誰に謝ってるんだ?おかしいぞぃ。」








へ?




「ひ、氷帝の宍戸は!?さっきまで此処にいたろっ?!」


「宍戸さんなら仲良さげな女と帰っちまいましたよー。
先輩が自分の世界に入ってる最中に。





立海の犠牲者2号ここに誕生。(1号は仁王)





「良いんだ、元はといえば俺が…、俺が悪いんだし(自己暗示+エンドレス)」



       そのころ―・・・




「おい、いいのかよ財布!!
ブランド物の、限定品なんだろっ?」


「うーーーん、何かどーでもよくなっちゃった。
コーヒーの臭いは、もうたくさんだし!!」




確かに。




「・・・新しい財布でもあんのか?」

「ないよ。」

「じゃあどーすんだよ。」



は、タタタッと走って、俺の方に振りかえった。



「私もうすぐ誕生日なんだ!!
買ってくれるでしょ?新しい財布!」


「・・・お前年に何回誕生日きてんだよ。」






多少の馬鹿さはあるものの、は俺の大事な幼馴染だ。





「なーーんかーーーいもっ!!」






俺の体力が持つ限り、


この馬鹿に、付き合ってやろうと思う。









そういう俺も、立派な馬鹿だ。     


        
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佐波屋様…、めっちゃ遅れて申し訳ありません!!!
スランプがあったので、文章グダグダです。
宍戸視点だし…(汗

全身全霊で、「感謝」と「謝罪」を。
7300HITキリリク、佐波屋様に贈ります。
              









** 調子に乗って続編お願いしちゃいました。やっぱり、リリゐ様の書く夫妻はさいこーッス!!ありがとうございましたー!
佐波屋 **