夏虎〜サマトラ4〜
夏休み。
さすがにお盆期間中はテニス部も休み。
普通なら家族で墓参りとかなんだろうけど、俺の先祖様は遠いブラジルの地に眠っている。
―――という訳でどこに行くでもなく、ゴロゴロのんびり過ごしていたんだが何でこんなことに・・・。
「あはははは。変なカニがいるよ!見てごらんビリー」
幸村からの無理やりな呼び出しで海に来てる俺。
毎度毎度、間違えんじゃねーよ。ビリーじゃなくてジャッカルだよ・・・。
「ったく、なんで海なんだよ」
「だって今日は海の日じゃないか。海を愛でる日だよ」
「海の日はとっくだよ!今はお盆。水の事故が多いの。危ないの。わかる?」
「ちょ、って。うわ!ビリー助けて!!あっ足が!!」
言ってるそばから・・・・・・!
俺は幸村のもとへ猛ダッシュする。
「足がかゆい!!」
俺、スライディング。
「そんなどうでもいい報告に「助けて」ってワード使うなよ!
・・・・・・って人の話を聞けよ!おい!幸村!俺の水着持って勝手にダイブしてんじゃねーよ!」
一人気持ちよさそうに海の中から手(と俺の海パン)を振ってる幸村。
「こっち来なよ!気持ちいいよー」
あいつはいいよな。一人で水着装備だし。なんてボーっと海に目をやる。
いい天気、加えていつもより人が少ない砂浜。俺だって泳ぎたいよ。
「なんで来ないのさ」
ひと通り泳ぎ、海から上がった幸村は不満げな顔。
「いや、だってお前が俺の海パン・・・」
「・・・・・・・」
「・・・なんだよ?」
「やだな、そんな絡みつくように俺の濡れた半裸を見るなよ・・・・・・」
「狽「やらしい言い方すんじゃねーよ!誤解されんだろーが!!」
「そんな事より、実はジャッカルにプレゼントがあるんだー」
「うわなんか嫌な予感」
ちょっと待ってて。と言い残し俺を置いて一人走り去る幸村。
2分、5分、10分―――。
おとなしく待っていたが、一向に戻って来る気配がない。遅すぎないか?
もしかして俺、置いてかれた!?
まさかそんな。・・・いや、ありえるな・・・。
急いで幸村の消えた方へ体を反転させる。
と、向こうから手をふり幸村がやってきた。
「遅くなってごめん。なかなか手ごろなのがなくてさ。はいこれ」
「・・・葉っぱ・・・?これがなんかあんのか?」
「これをこーやって・・・股間に・・・はい出来上がり!」
「狽チて、ナンダヨコレはー!!??」
「原住民?」
「幸村のあほー!!早く俺の着てた服返せよ!こんな格好、誰かに見られたら恥ずかしいだろうが!」
「そうだなぁ。返して欲しかったらあの木の実取ってよ」
「あんな高い場所じゃ届かねーよ」
「これ使いなよ」
と幸村が手渡したのは木の棒。
まぁ、ないよりましか。
「サンキュ」
「やっぱりお前原住民だろー!!出て行け!!」
「違うし!!たとえそうだとしても追い払われる意味がわかんねー!!」
「うちの羊や牛を襲いやがって!」
「なに夢見てんだよ!!日射病か?そうなんだろ!?」
「あーあ、バリーボッターごっこも飽きたな」
「バリーボッターに原住民関係ねーだろ!」
「ジャッカルいまいちノリ悪いし。さーて、かーえろっと」
そう言うとものっそい速さで帰り支度をして、あんぐり口を開けたままの俺を置いてさっさとバスに乗り込む。
ポカーンと幸村を見送る俺。
「秤エの着替え全部持って帰るんじゃねーよ!!幸村ーーー!!待てこらーーー!!!」
葉っぱ一枚でバスを追いかける俺、ジャッカル桑原15歳。
忘れたい青春の1ページ。
Fin.
****************
去年のお盆から書き始め、秋に出来上がったネタ。
ようやく陽の目を見る事ができました。
そして今年もやはりお盆に間に合わず。
サマートラブル。略してサマトラ。夏虎。
2008/8/22 佐波屋