れあい










「で…この公式をここにあてはめるんだ。」

『ん〜』


あたしは今、弦一郎の部屋でテスト勉強をしている。


『もーわかんなーい!』

「わからないわけなかろう。公式をあてはめるだけではないか。」

『だからこの公式が意味わかんないの!大体誰がこんな事考えたのよ。』

「へりくつを言うな。」



部屋の窓からは太陽の光がめいいっぱい降り注いでいる。

いい天気だな〜外行きたいな。



「…聞いているのか?」

『えっ!?あーごめん。』


ダメだ。勉強に力が入らない。
折角弦一郎が時間を作ってくれてるのに。








「散歩でも行くか。」

『…本当!?』


弦一郎の意外な言葉に目を丸くする。


「外の空気でも吸えば少しは気分転換にもなるだろう。」

『うん!』


いつもならあたしが「外行きたい」って言っても怒るくせに…

たまに見せるこんな優しさが大好きでたまらない。









靴を履いて外に出る。






自然と繋がれる弦一郎の手。





付き合って半年。
こうして2人で勉強をしたりデートしたり、手を繋いだり。

「好き」の言葉も言ってくれる。

周りから見たらそこそこラブラブなカップルなんだろう。

だけどあたしは足りないんだ…



もっと弦一郎に触れたいし、触れてほしい。



キスだってしたい…



そんな風に思うのはおかしいのかな?


『ねぇ弦一郎?』

「何だ?」


弦一郎の家から10分くらい歩くと川が流れている。
あたし達はそこの堤防に腰掛けた。


「どうした?」

『…あ!あそこの看板のトコまで競争しよ!負けた方は勝った方の言う事聞くの!よーいドン!!』

「おい、!」


一足先に立ち上がり走り出す。

でもテニス部レギュラーの弦一郎に適う筈もなく






「突然どうした?」






あっという間に追い付かれて抱き締められる。



『弦一郎…苦しい…』

「すまん!」


弦一郎の腕の力が弱くなったので、あたしは弦一郎から抜けてまた走り出した。







『イエーイ!あたしの勝ち〜!』


弦一郎は少し呆れた顔をしながらゆっくり歩いてくる。


、何かあったのか?」

『…帰ろっか?』


弦一郎に心配をかけたくないあたしは、質問にも答えず精一杯の笑顔を向ける。








それから一週間後、いつものように弦一郎の部屋で勉強をしている。


あたしの視線は弦一郎の唇ばかりを捉えて


「何だ?俺の顔に何かついてるか?」

『ううん…』

「では何だ?」

『あの…さ…』


弦一郎は頭に?マークをつけながら黙ってる。

聞かないでおこうと思ってたけど…






『あたしのこと…どう…思ってる?』

「どうって…」


弦一郎の事困らせたくないのに…どうして聞いてしまうんだろう。






それはやっぱり不安だからで…






「そんな事…好きに決まってるではないか。」

『………』

「今日は何だか変だそ。」



変なのは今日だけじゃない。

弦一郎から「好き」だと言われても気持ちが満たされないのはきっと…








『この前言った事覚えてる?』

「この前?」

『堤防で走ったでしょ?その時の勝った方の言う事聞くってやつ。』

「あぁ、そんな事もあったな。」



こんな事言ったら破廉恥な女だって思われるかもしれない。

下手したら嫌われるかもしれない。



「何だ?言ってみろ。何だってしてやるぞ。」

『ほん…とに?』

「男に二言はない。ただあまり馬鹿げた事は…」

『嫌ったりしない?』

「嫌うような事なのか?」



それは弦一郎次第なんだけど…















『キス…してほしい…』





弦一郎の顔は真っ赤になって少し戸惑ってるようにも見えた。


『…弦一郎は…』

「………」

『弦一郎は…思わない?』


相変わらず口を半開きにして固まっている弦一郎。


『あたしは思うよ…そりゃ好きって言われて嬉しいし、抱き締められるとドキドキする!でもそれだけじゃ足りない…足りないの!』

「…?」

『好きなら普通はキスしたいとか思うもんじゃないの?それともあたしがおかしいの!?』


言うまいと思ってた言葉が堰を切ったように溢れ出す。








「…おかしくなどないぞ。」


ふわりと弦一郎の体温に包まれた。


「そんな風に思っていたのか…不安にさせて悪かったな。」


弦一郎の心臓の音が、めちゃくちゃ速く波打ってるのが分かる。


「俺も男だからな…好きな女にそんな事をしてしまえば制御が効かなくなる…お前は…」

『………』

「お前はそれでもいいのか?」





あぁ…そっか…
弦一郎は弦一郎なりにあたしの事を考えてくれてたんだ。

それが何だかとても嬉しくて、いつも以上に弦一郎を愛しく感じた。







『あたしは…弦一郎じゃなきゃイヤ…』








弦一郎の瞳があたしを捉えて離さない。







―終―



***あとがき***
11000キリリク、佐波屋様へ。
ヒィィィィ!!すいませんすいません!!
手塚かジャッカルか、はたまた真田か…と言う事で真田をチョイスさせて頂きました。
もー何と言っていいか…言い訳もできません(するな)
しかも何だか最後微妙に裏っぽいし…( ̄□ ̄;)!!

返品可です…本当に申し訳ありませんでしたー!!



2007.02.18









** ウメさんから頂きました。キリ番リクです。難しい(とされる)真田甘夢、ありがとうございました!
佐波屋 **