「偏屈」伊武深司のクリスマス
「うー・・・。やっぱ寒いよね・・・」
「当たり前だろ。12月なんだから」
「うん、そうなんだけど。でもこんなに寒くなるとは思わなかったね」
「気温の事まで俺に文句言われてもなぁ。それに今日、誘ったのは確かに俺だけどさ、ついてくるって決めたのはアンタでしょ」
「えへへ。でも、ありがとね」
「なにがさ」
「だって、伊武くんが誘ってくれなかったらこんなに綺麗なイルミネーション見れなかったんだもん」
「・・・あー、まぁ、喜んでるならいいけど・・・」
「それにしても寒いよね。息が白いよ。ほら」
「なに?それも俺が誘ったから?へー、結構根に持つタイプだったんだ。・・・風邪とか引かせたらやっぱ俺のせいになるんだろうな・・・」
「もう!せっかくのクリスマスなんだからぼやかないの!」
「暗くて悪かったね。あ、そろそろ俺といるの後悔しはじめてるんだな。やっぱそうだよな。わざわざ寒い思いまでして、俺のぼやきまで聞かなきゃならないんだから・・・。
その上風邪まで引かれちゃたまんないよな・・・。あ、そうだ」
「え?」
「手、出しなよ。俺、手の温度は高いから。少しは寒さがやわらぐんじゃない?」
「あ、ありがとう・・・。本当にあったかい・・・」
「へー、俺が嘘ついたと思ったんだ。信用ないよな・・・」
「そんな事ない!うれしい。ありがとう」
「いや、別に・・・。そのかわり、風邪引かないでよね」
「うん!」
「あ・・・言い忘れてたけど・・・」
「なに?」
「メリークリスマス」
「うん!メリークリスマス!」
Fin.